フィンランドの絵本といえば『ムーミン』ですよね。
原作の小説や絵本に描かれた絵は独特のタッチが魅力的ですよね。デパートの北欧展なんかに伺うと、多くのムーミングッズが置かれているのを目にします。
主役の「ムーミン」だけでなく、「ミィ」や「スナフキン」などのキャラクターも高い人気がありますね。
さてこの北欧を代表する作品である『ムーミン』なのですが、
核戦争後の世界のお話
なのではないかと噂されているのです。
温かみのある作品にそんな暗い裏設定があるのでしょうか。今回はムーミンからこちらの都市伝説をご紹介したく存じます。
目次
ムーミン
「ムーミン」や「ミー」をご覧になったことはあるけれども、『ムーミン』の原作など詳しいことについてはご存知でないという方もいらっしゃると存じます。
そこでまずは『ムーミン』の原作についてご紹介します。
原作は小説
今でこそ絵本や漫画・アニメのイメージが強い『ムーミン』でございますが、最初は小説でございました。作者はフィンランドの作家トーベ・ヤンソン氏(1914年8月9日- 2001年6月27日)。
小説版の『ムーミン』には多くの挿絵があり、ストーリーもさることながら、挿絵のセンスがこの作品の根強い人気にも繋がっていると思います。
ムーミン谷の絵辞典 英語・日本語・フィンランド語
ストーリーや挿絵を受けて、イギリスの出版社が漫画版のオファーをするなど、ある種とび抜けたセンスがあったのです。北欧と言うとセンスの良い雑貨などが思い浮かびますが、『ムーミン』はその中でも別格だったのではないでしょうか。
特に日本では『ムーミン』の物語については一話も知らないけれど、キャラクターが可愛いから好きという方も多いはず。
主役は妖精
『ムーミン』の主役はカバのような顔をした謎のキャラクター。
UDF MOOMIN シリーズ1 ムーミントロール
彼は北欧で古くから伝わる妖精「トロール」なのです。単に「ムーミン」と呼ぶことが多いですが、正確には「ムーミントロール」といいます。
原作上はこの名前の意味について深く触れられることは少ないですが、「ムーミン」はトロールの種族を意味しているという解釈が正しいそうです。
ちなみに主役のガールフレンド「フローレン」の原作小説では名前が無く、ただ「スノークのお嬢さん」と呼ばれておりました。「スノーク」もまたムーミンとは異なるトロールの種族なのです。
フローレンの兄で「スノーク」と呼ばれるキャラクターもいますが、それは種族名で呼んでいるだけなのですね。
舞台はムーミン谷
『ムーミン』の原作小説は1945年から1970年にわたって、全9作品発表されております。
物語の舞台は主に「ムーミン谷」という、人間が一切住んでいない秘境。
そこでムーミンたちが体験する様々な出来事や冒険の物語を綴ったものです。
ときおりムーミン谷から出て行くこともあります。
冬になると雪深くなるというのも北欧らしさが表れています。
原爆後説?!
上記のような『ムーミン』。パパの過去などダークな部分は多少ございますが、読んでいる人にショックを与えるような記載はありません。
もちろん「『ムーミン』は原爆後の世界の物語である」という旨の直接的な表現は一切ありません。
では何故まことしやかに「ムーミン原爆説」が噂されているのでしょうか。いくつか論拠を挙げていきます。
人間キャラがほとんど登場しない
『ムーミン』においては人間らしいキャラクターはほとんど登場しません。
ムーミンキャラクター図鑑
頼れる(?)お巡りさんもムーミンと同じような見た目をしています。
このことから「何らかの理由で人間がいなくなってしまった世界であるのではないか」という疑念が生まれてきたというわけです。
ただ原爆に結びつけるにはまだ早いですね。
第一作目の発表年が原爆が投下された年
唐突ですが、ここで原作小説第一作目『小さなトロールと大きな洪水』が発表された年を確認してみましょう。それは1945年。
小さなトロールと大きな洪水 (新装版) (講談社青い鳥文庫)
1945年といえば第二次世界大戦の終戦を思い浮かべる方が多いかもしれません。終戦より少し前に、広島と長崎に原子力爆弾が投下されています。
実戦で原子力爆弾が使用されたのは幸いこれが最後となっております。
ここでムーミンと原爆が結びつくわけです。
作者のトーベ・ヤンソン氏は表紙裏にヒトラーの風刺画を描くなど、反戦家でもありました。ともすると、いよいよ核戦争による終末を憂う作品群でもあるのではないか、と思ってきてしまうのも無理はありません。
スナフキン
先ほど「人間らしいキャラクターはほとんど登場しません」と述べましたが、
「いやいや、スナフキンさんがいるでしょーよ!」とお思いになられた方も多いはず。たしかにスナフキンは人間のような見た目をしていますね。
「ムーミン原爆説」によると、スナフキンは人間の数少ない生き残りだそうです。
彼は元軍人で、戦争ではぐれてしまった部隊を探すために旅をしているというのです。あるいは核戦争を引き起こしてしまった人間の生き残りとして責任を持って終末を見届ける等、様々な説がございます。
彼の世捨て人的な行動と、その詩的で意味深な言葉からもどこか憂いのある人のようにも見えますね。
ミィ(ミムラ一族)
スナフキン以外のメインキャラで人間に見えるキャラとして、「ミィ」がいます。
実は彼女も核戦争の生き残りらしいのです。
可愛らしい見た目で、もしかしたら日本では主役のムーミン以上の人気があるかもしれないミィ。少女らしくも、どこか意地悪そうな見た目が魅力ですね。
しかし都市伝説によると、彼女にも暗い設定があるというのです。
ミィの体が小さいのは放射能の影響で成長が止まってしまったから、両親が目の前でころされてショックで成長が止まったからなど…
本編からは想像がつかないような設定が噂されております。
じゃあ、ムーミンは何者?
核戦争後の世界ということはひとまず承服したとしましょう。
では、肝心の主人公ムーミンは何者だというのでしょう。現在、世界中を探してもムーミンのような人語を話すカバのような生き物は存在しません。
ムーミンは…
放射能の影響で知能を得たカバ
であるというのです。つまり突然変異したカバ。ミュータントなのです。
これについてはもう何も申し上げることはございません。「ムーミン原爆説」はお伽噺的なファンタジーではなく、SFなのです。
最終回の意味
『ムーミン』原作小説シリーズの最終作『ムーミン谷の十一月』ではムーミンたちが冬眠するところで話が終わります。
ムーミン谷の十一月 (新装版) (講談社青い鳥文庫)
ここで原爆を結びつけると、ムーミン谷での「冬」は「核の冬」を意味しているのではないかというのです。
「核の冬」はアメリカの天文学者カール・セーガン氏などによって提唱された異常気象の仮説です。
原子力爆弾の爆発によって巻き上げられた煙や灰の中には、何年も地面に落ちず上空で舞い続けるものがございます。多くの原子力爆弾が投下される核戦争を想定すると、その上空に舞う煙や灰がどんどん溜まり、最終的には太陽の光を遮ってしまうのです。
上記により地面に太陽光が届かない環境が作り出され、地球上はほとんどの生物が生息できないような氷河期になってしまうのです。
そんな何年も続くような氷河期の間、ずっと冬眠していられることはできるのでしょうか。
新種のミュータントならできる!とも考えられますが、多くの論者によると、ここでの「冬眠」は「永眠」を意味しているというのです。
ムーミンのトーミンはエーミン… じゃかましいわ!
そんなことはないんです
上記の説を踏まえて、多くの方が反論をしております。
幣ブログでは反論まで記載することは珍しいのですが、何とも締りが悪いと感じましたので、反論までご紹介いたします。
そもそも第一作目に人間の生活が見れる
上記で「人間らしいキャラクターはほとんど登場しません」と記載し、スナフキンやミィをご紹介していきましたが、実は第一作目に人間の営みを見ることができるのです。
第一作目でムーミン家族がムーミン谷に引っ越してきます。その引越しの理由は人間たちのストーブが近代化したため。
ムーミンたちは従来人間と同じ世界におり、ストーブの影に隠れて生活していたのです。人間たちにとってムーミンたちは首筋の近くを通ってもゾワゾワッとするだけの存在だったそうです。
ただしストーブが近代化して、住みにくくなってきたと…。
ムーミンの家がタイルストーブの煙突の形をしているのも、おそらくストーブに住むというムーミン一族の伝統を汲んだものでしょう。
つまり人間は栄華を極めているのです。滅んではいないのです。
本作品に込められた意味を考えると「核戦争による終末」への憂いではなく、「文明の高度化に伴う心理的暖かみとの離別」への憂いなのではないでしょうか。
書き溜めていたものを発表した
『ムーミン』原作小説第一作目の発表は確かに1945年で広島・長崎の原爆投下があった年と同年です。
しかし執筆を始めたのは1939年であるとされております。
さて核兵器の開発スタートをどこと位置づけるとするかは曖昧かもしれませんが、一度有名なマンハッタン計画であるとしましょう。
このマンハッタン計画は1939年に開始されたと言われています。1940年代前半はナチス・ドイツ側と連合国側の熾烈な原子力爆弾開発競争が行われていたのです。
お、『ムーミン』執筆年にこれも一致する!とお思いになるかもしれませんが、マンハッタン計画はアメリカでも極秘中の極秘計画。ドイツの核開発も同様でしょう。お互いの手の内を知られるわけにはいかなかったのです。
そんななか『ムーミン』の作者トーベ・ヤンソン氏が原子力爆弾についてどんなものだったのか知ることはできないはずなのです。
スナフキンやミィも妖精
「ムーミンは以前ストーブの影に住んでいた」という設定からピンと来た方もいらっしゃるのではないでしょうか。ムーミンの登場人物は皆、人間よりもはるかに小さいのです。
たしかにシリーズが進むにつれて、登場人物が新聞を読み始めたり切手を集めたりとかなり人間に近い生活を営んでいるようにも見えますが、そのサイズは全然違うのです。
ともすると、ムーミンと肩を並べることのできるスナフキンやミィも人間ではないということがわかりますね。
スナフキンやミィと原爆とのつながりのストーリーは否定されることになります。
ムーミンはカバじゃない
同上、サイズ的な観点からムーミンはカバではありません。
カバと呼ぶと怒るシーンもありますので、カバも同世界にいるのでしょう。
「核の冬」の発表
仮に『ムーミン』の作者トーベ・ヤンソン氏が何処かの国の情報機関に勤めていた諜報員で、様々な国の極秘情報に触れることができたとしましょう。
過去にCIAなどの情報機関に勤めていた方の中には民間にスパイとして溶け込んでいたという方も多いので、「ムーミンスパイ」説はあながち頭から否定できる話ではありません。
そんなヤンソン氏でも「核の冬」については知る由もないのです。
「核の冬」は広島・長崎の原爆から38年後、1983年に発表された説なのです。原作小説は全作品発表が終わっています。
確かに1983年以前にも非公式な場で「核の冬」について語られることはあったかもしれませんが、ましてや執筆中は各勢力が原爆をこぞって開発していた時代で、実戦での投下はされていません。
「核の冬」は実際に原爆を落とした結果生じた「キノコ雲」から着想を得たもので、ヤンソン氏がその考えにいたる時間的余裕はなかったと思われます。
まとめ
「ムーミンのトーミンはエーミン」
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最後までお読みくださいましてありがとうございました。