人を食べたくなる?「ウェンディゴ症候群」

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皆様には無性に物を食べたくなるときはございますか?

「ダイエット中だけど、太っちゃうけど、食べたい」

ふいに襲う誘惑。その誘惑に負けるか否かは別にいたしまして、誰でも感じたことがあるのではないかと存じます。それがポテトチップスやカップラーメンのような一般の食べ物であるならば、まだ可愛いほうです。

世界には人間を食べたくなってしまう病気があるのです。

ウェンディゴ症候群

と呼ばれている病気はアメリカ北端~カナダ南部のインディアンを中心に罹ってしまうおそれのある精神疾患。

ウェンディゴ症候群に罹ると、最終的には人肉以外は口にしたくなくなってしまうようになってしまうというのです。

これを「ウェンディゴ」という精霊が憑いたことによるものと信じる方々も多くいらっしゃいますが、実際に症状が出てしまっているものですから、科学的な分析もなされております。

今回は精神疾患「ウェンディゴ症候群」についてご紹介させていただきたく存じます。

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精霊「ウェンディゴ」とは

前述の通り「ウェンディゴ症候群」の名の由来は精霊のウェンディゴ。そこでまず精霊ウェンディゴについてご紹介いたします。

アルゴンキン族

「ウェンディゴ」はアメリカ北端~カナダ南部で信じられていると申し上げましたが、そこに住む「アルゴンキン族」という先住民を中心に信じられております。いわゆるインディアンをイメージしてくださればよろしいかと存じます。


Ojibwa: People of Forests and Prairies 

アルゴンキン族は全盛期では数十万人いたといわれておりますが、現在は数千人規模になっております。それでも北アメリカで最も人口の多い先住民です。

カナダの首都オタワ北部に流れるガティノー川流域を中心に、アメリカ北部の森林地帯まで広く分布しております。

悪意ある精霊

アルゴンキン族の中にも様々な民族がありますが、ウェンディゴはオジブワ族、クリー族、ナスカピ族、イヌー族など幅広い民族に信仰されております。

民族によって細かい認識は異なるようですが、共通しているのは

ウェンディゴは悪意ある精霊で、人を食べ、超自然的な存在であり
冬や北、寒さ、飢餓という概念に強く関係している

ということ。

オジブワ族を研究していた故バージル・ジョンストン博士はウェンディゴについて以下のように述べられております。

ウェンディゴは衰弱しやつれていた。乾燥した肌は骨で突っ張っていた。骨で出っ張った部分の肌は壊死したように灰色になっており、眼球は眼孔深くに推し戻されていた。例えるならばウェンディゴはつい最近墓場から掘り出された白骨死体のようで不気味であった。唇は裂けて血まみれになっていた(中略)不潔を極め、血肉が変質していたウェンディゴは奇妙で不快な腐敗臭を放っていた。いわば死臭だ。

参考:The Manitous: Supernatural World of the Ojibway


Wendigo 

凶暴そうですね。

普段は無害

とはいっても、ウェンディゴはやたら滅多ら人に危害を加えるような精霊ではないようです。

普段は一人旅を楽しむ旅人の背後に忍び寄り、気配だけを悟らせます。旅人がどれだけ素早く後ろを振り返っても、その気配の主を見ることはできません。

その状態が何日も続いた後は、ウェンディゴの方から話しかけてくるそうです。はっきりとは聞こえない、微かな声で…。

これらは旅人が不気味さに耐えられなくなるまで続くとか…。

…と普段のウェンディゴは不気味であることは確かかもしれませんが、直接危害を加えてくるということはなさそうです。

自然に危害を加えようとする人を食べる

今回ご紹介するウェンディゴ症候群を患った場合、人を食べてしまうようになってしまうのですが、精霊ウェンディゴ自身も人を食べることがございます。

先述のように普段はおとなしい(?)のですが、自然に危害を加えようとする人を発見するとその人を食べてしまうというのです。

自然に畏怖と崇拝の心を持つトーテミズムのインディアンたちの戒めとしての伝説かもしれませんね。

夢でウェンディゴを見たら危ない

さらにウェンディゴは夢にも現われるそうなのですが、この場合がかなり厄介。

特に飢えや寒さに苦しんでいる人の夢に現われることが多いとされているのですが、この夢を通じてウェンディゴが憑りついてしまうかもしれないというのです。

ウェンディゴに憑かれた人が仮に人を食べてしまった場合、その人はもう人ではなくウェンディゴに変わってしまうのだとか。

こうなってしまうのです。

これも飢饉の際に人喰いを行わないようにするための教えだと考えられております。

北アルゴンキン族たちにとって人喰いはタブー。それが例え飢えに苦しみ、自分が死んでしまいそうな場合であっても絶対に行ってはいけないことだとされております。人を食べるならば、死んだほうがはるかに良いと考えられています。

そんな教えを破り、人を食べた者がウェンディゴに成り変ってしまうのです。ウェンディゴになってしまった元人間は暴力的になり、人を貪るそうです。

ここら辺の「静かなウェンディゴ」と「暴力的なウェンディゴ」の矛盾点については、民族によって信仰がさまざまであり、一つの線でまとめることが困難なためご了承ください。

ウェンディゴ症候群

さてここからが本題。

インディアンの信仰では「ウェンディゴに憑かれた者は人を食べたくなる」とされているのですが、そんなことは精霊への信仰がない人にとってはにわかには信じがたいお話です。

症状

ドイツ在住のアルビン・マイヴェス氏などアルゴンキン族の居住圏とは関係ない食人鬼も世界には実際におります。

しかしウェンディゴ症候群はこれらの通常の食人鬼とは異なるのです。

確かに食人自体、何らかの精神疾患の可能性がございますが、ウェンディゴ症候群の症状を見ると、若干他の人喰いとは違うのではないかと思えてきます。

そこでウェンディゴ症候群の具体的な症状例をご紹介します。

うつに似た症状

ウェンディゴ症候群に羅患した人は、まず気分が低下し、食欲がなくなります。

その抑うつ状態は多少乱高下はするものの、次第に重くなっていき、自分を塞ぐようになっていくそうです。

この点、日本でも流行している「定型うつ病」の悪化パターンに似ているような気がしますね。

人の肉がおいしそうに見える

食欲の低下は留まるところを知らず、最終的に通常の食事を拒むようになります。

代わりにいままで食べたこともない人肉を無性に食べたくなるのです。

というのも、周りの人(特に家族)がおいしそうな食べ物に見えてしまうらしいのです。この場合の食べ物はごちそうになるような動物のことでしょうか。

家族がおいしそうに見えるといえば、『にんじん大好き!』という漫画を思い出しますね。『魔物語』に収録されております。


魔物語 (講談社コミックスなかよし) 

この状態でまだ理性を保てている人は「このままではウェンディゴになってしまう」と恐怖に震えながら、強烈な欲望を抑えるそうです。

知性がなくなる

さらに悪化すると、人の言葉を理解することができなくなってしまいます。外見も気にならなくなり、自分自身の唇を噛み千切ったり自傷行為も多々見られるそうです。

また抑うつ状態であったのが、躁うつ状態(ハイテンション)に変わり、野生的に振る舞い、「私の心臓は凍りついている」という旨の謎の主張をすることもあるそうです。

この状態になるともはや猛獣も同じで、人を噛み千切ることが多くなります。そこでこの状態になる前に現地では拘束し、できる限りのことをすることが多いようです。

原因

ウェンディゴ症候群は冬に発症することが多く、冬季の食料の乏しい時にはビタミンが不足しがちで、精神状態に変調が生じやすくなる等、栄養面での問題によるものと考えられております。

また「ウェンディゴになってしまう」という不安を抱えるなど、通常の精神異常とは異なることも挙げられることから、文化の影響も強く受けている「文化依存症候群」であると結論付けられていることが多いです。

…しかし具体的な事例は確認できませんでしたが、旅人がウェンディゴ症候群にかかってしまうこともあったとか…。ともすると、本当にウェンディゴが憑いたのかもしれないですね。

治療方法

一見どうにもならなそうなウェンディゴ症候群ですが、そこはさすが先住民。それらしい治療方法がございます。

「私の心臓は凍り付いている」と主張するウェンディゴ症候群の患者が多いことから、この凍った心臓を解凍してあげればいいと考えたわけです。

そこで火の側に座らせて患者の体を温め、熱した熊の脂肪を無理矢理食べさせたり、大量のアルコールを飲ませたり…体が温まりそうなことを出来る限り行うのです。

場合によっては患者と一緒にサウナ小屋に入って呪文を唱え続けるといういかにもスピリチュアルな治療法までございます。

実際にこれらの治療法で改善することはあるそうです。

手遅れ

とはいえ、手遅れのケースもあります。

既に人を食べてしまった場合

はもう人間に戻ることはできないと判断され、大斧で処刑の後、心臓を炎の中に投げ入れられるそうです。

まとめ

飢えンディゴ

<<笑う男(The Smiling Man)>>

<<THIS MAN>>

<<スレンダーマン>>

<<イギリス秘密情報部の「血液凍結実験」>>

ボーン

最後までお読みくださいましてありがとうございました。

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