本エントリーは怖い話をあつかっております。ご注意ください。
皆様は子供時代、何か変なお菓子とか食べたこと、ございませんか?
たまたま寄ったお店に陳列されていた見たこともないパッケージ。
私は珍しいもの好きなので、そんな経験あったような気もしますが、明確に記憶には残ってございません。
さて、今回はそんなお菓子を食べてしまった女性にまつわる都市伝説。
その女性は紫色の猿に追い回され、とんでもない方向に話は進むことになります。それは以下を読んでいただくとしまして、ともかくその猿の名は、
「シュレッダー・モンキー」
今回はこの都市伝説についてご紹介したく存じます。
目次
フリーライターからのメール
以下は英文を翻訳したものです。
From:イアン・コロス(周辺科学雑誌寄稿者)
To:マイケル・ワイツキー編集長
マイク編集長、
数週間前、私は編集長が興味をお持ちになられそうな奇妙なブログを発見いたしましたので、ご報告させていただきます。
私の友人が第一発見者です。編集長のメールボックスにも、よく変な業者からの迷惑メールが入っていることがあるかと存じます。例えば、ED改善の薬に関するものや、ダイエットサプリに関するもの等、様々です。ともかく、この私の友人はその類のあるメールに貼り付けられたハイパーリンクを偶然、クリックしたのです。
しかし、繋がったのはED改善の薬でも、ダイエットサプリに関するサイトでもなく、ただの若者の女性が運営している個人的なブログサイトだったのです。彼女はアリアナ・ゴメスという名の女の子です。私はFacebookとInstagramでこのアリアナ・ゴメスを探したのですが、見つけることができませんでした。
友人は私にそのURLを転送してくれました。念のためにと思い、私はそのブログをプリントアウトしておくことにしたのです。URLが既に使えなくなってしまっているため、これは功を奏しました。2回目にクリックした際にエラーメッセージが表示されました。そしてパソコンはウィルスに感染してしまったのです。
我々はアリアナ・ゴメスが言及している猿の画像を見つけることができませんでした。
以下はそのブログの全文です。私がプリントアウトしたものから、書き起こしたものになります。信憑性につきましては、ご自身での判断のほど、よろしくお願い申し上げます。
敬具
イアン
*******
アリアナ・ゴメスのブログ(Copy)
ブログエントリー:2014年9月1日
「シュレッダー・モンキー」
みんな、こんにちは。私はぬいぐるみの猿の画像を貼り付けた者です。ご存知、うずくまった四角い胴に、細長い腕、胴体を支えることのできなそうな細い足、2つの耳のついた丸い頭。基本は紫色ですが、手のひらなど、ところどころモスグリーンで色づけされています。おなかのところにはピンクの大きい丸が描かれています。顔には赤い目と鼻、でも口はありません。口になにがあったのかはわかりません。
どういうわけか、この猿は私の周りを離れないんです。「シュレッダー・モンキー」そう呼ばれていた…この小さな漫画風のキャラは私の人生の中で2回も、それも全く異なる種類の出来事で登場しています。みんなの前には絶対、現れないんです。私は、昏睡状態のおじいさんの介護をしているとき、不穏な事件が起きたんです。そして彼は…
14年前のドライブ
いや、ともかく、こと始めから話させてください。
それは14年前のことです。私は8歳でした。私の叔母と叔父はタホ湖(アメリカの湖)で貸し別荘を経営していました。毎年の夏、私の親戚は皆、泳いだり、水上スキーをしたり、バーベキューをしに数週間そこに泊まりに行ってました。街の喧騒から離れて、羽を伸ばすんです。
その別荘は他の人も使う施設なので、私の父は有給を取って早めに車を出すことになっていました。ちゃんと泊まれる状態かどうか事前に確認するためですーーー割れたガラス瓶や、使用済みの避妊具がないか~とか、ましてや遺体なんかが遺棄されてたら大事ですからね。
その年、私は父の退屈を紛らわしてあげるために、一緒についていくことにしたんです。
初夏の嵐の中、私達は父のシビックでの約8時間に及ぶドライブに出発しました。ある時点で、雨音に誘われ、私は後部座席で眠りに落ちてしまいました。私が目を覚ましたとき、車は古びたガソリンスタンドに駐車していました。
私はドアを開け、車を降りました。こんな場所、知りません。雨は止んでいました。暖かく、空は快晴でした。ガソリンスタンドには、4つのポンプ、そしてちょっとした食品等が買える小さな小屋がありました。辺り一面は背の高い黄色い草が生えた原っぱ。他には何も見えません。
錆びた小屋に謎の食品
小屋は第二次世界大戦時代からあるように思えました。錆びた板金の壁に、木でできたメッシュのドア。窓はありません。切れていて、判読不可能なネオンサイン。父は車の外で車にガソリンを補充していました。彼は私に好きな食べ物を買っていいよと、5ドルくれました。
板金で囲まれた小屋の内部は、外観とほとんどおなじような有様でした。蛍光灯は薄暗く、空気は埃まみれ。白いタイルの床の所々が剥がれ落ちています。2つの古い冷蔵庫が、ソーダとビールを揃えて壁を背に、置いてあります。カウンターの背後には、シガーの缶が見本として置いてありました。またスナック食品の棚もありました。キャンディー、ポテトチップス、ビーフジャーキー、豆の缶詰、さけるチーズ(私は嫌い)、シーチキン、コンデンスミルク、シリアル。全部埃を被っています。
私はざっと見てみましたが、どの商品のブランドも聞いたことがないようなものばかりでした。
例:CHALKのチョコレート(たぶんチョコだと思った)。明るい青色のレタリングが付された、淡い紫色のパッケージに入ったスニッカーズのようなものだと思う。原材料などはすべて、エジプトの象形文字やら漢字やらが混ざったような言葉で書かれており、私は中に何が入っているのかは、はっきりとはわかりませんでした。
それから細長いビニールに、茶色い内容物が入っている商品もありました。私は端っこを破って、そこから中身をチューチュー吸うような「Go-gurt」のような食べ物かなと思いました。しかし、ラベルは謎の言語で書かれていたので、確信はありません。たぶん別物なんじゃないかな。CHALKの文字と同様、直線と三角形が特徴的な文字で、解読は不可能でした。
「シュレッダー・ショック」
さて、
少し気にはなりましたが、私は立ち去ろうとしました。しかし、ふと、シリアルの並んでる棚を見ると、その中に英語で書かれた箱があることに気がついたんです。「シュレッダー・ショック」。箱は黄色で、文字はcomic-sans書体の赤でプリントされていました。子供のシリアル。正面の写真は、ミルクで満たされたボウルに、細かく砕かれたグラノーラと淡いマシュマロが入っているものでした。マシュマロは紫色の猿の形をしていました。箱の後ろには、竹の中にいる紫色の猿のキャラクターが描かれている、シリアルの箱によく付いているゲームがありました。
そう。紫色にモスグリーン、赤い目、お腹にはピンクの丸。うずくまった胴体に、長い腕、物理的にありえない脚。口はない。
そのゲームは円形の迷路で、「シュレッダー・モンキーがオアシスへの道を見つけるのを手伝おう!」という文章が書かれていました。迷路の反対側にあたる、箱の右上には幸せそうな魚が顔を出している小さな池のイラストが描かれていました。言葉を手がかりに進む迷路で、「サル」「ジャングル」「冒険」やら何やら。色々書かれていました。
私がそのカラフルなシリアルの箱を調べると、棚の反対側の通路でシャカシャカと物音がしたような気がしました。私は父かと思い、会いに行きました。でも、そこには誰もいませんでした。ヒュー、バタン!という音がしました。
ドアが揺れていました。ドアの向こう側には誰もいないようで、私は一人ぼっちでした。おかしい。嫌な予感がする。私はできるかぎりそこを離れなくてはいけない気がしました。
空腹でした。しかし、奇妙なラベルの食品は絶対に信用できません。そこで私はシュレッダー・ショックに賭けてみることにしました。私は箱を掴み、カウンターに持って行き、レジの人に代金を払いました。私はその人のことを正確に思い出せません。使っていたのは手動のレジスターだったと思います。私は商品を持って車に戻りました。そして1分後にはタホに向かう道に戻っていました。
難解なゲーム
シリアルはまあまあ、おいしかったです。マシュマロとグラノーラが混ざり合っていました。食べ飽きた後、裏面のゲームで遊んでました。かなり難しいものでした。
子供の頃、単語で進む迷路をしたのを覚えていませんか?それらは幼稚園児向けに作られているんですよ。IQが2にも満たない幼稚園児用ですよ?しかし、この迷路をクリアすることはできませんでした。30分は試みたと思います。おかしかったんです。入口も、出口も場所はわかっています。出口に繋がる道も当然あるのですが、その道に繋がらないのです。
▲画像はイメージです。
さらに、単語探しも全然できるような代物ではありませんでした。私は誤植に違いないと決め付けました。私は怖い話の本の表紙の裏側の白紙部分でいろいろ試行錯誤しました。しかし私がたどり着いたのは同じ文字列。何回やっても同じでした。
GARD
NWODR
EH
私は混乱し、文句を言って、その箱と本をほっぽり出し、昼寝するために寝そべりました。目覚めると、私達はタホに到着していました。寝ている間に、空はまた曇ってしまったようです。水溜りを通り別荘に入り、掃除し、自分の部屋を選びました…シリアルの箱のことなんて忘れてしまっていました。母や弟のホセ、従兄弟などがやってきて、水泳やバーベキューをしている間、それが脳裏をよぎることなんて一度もありませんでした。2週間後、私達が家に帰ったとき、箱は父の車から既に消えてなくなっていました。
家に帰る途中、古びたガソリンスタンドを通ることなどありませんでした。
9年後、おもちゃ屋さんにて
時は過ぎ、9年後。
2009年、私が17歳のときです。高校でももう上級生。私は従兄弟の赤ちゃんの最初の誕生日プレゼントを探すため、ショッピングモールのおもちゃ屋さんにいました。
すべての親(あるいは叔母や姉)はわかると思いますが、ショッピングモールのおもちゃ屋さんのぬいぐるみコーナーを歩くと、まるでちょっとしたディズニーランドを散歩しているかのような気分になりますよね。カラフルで、沢山のかわいいぬいぐるみ、中にはちょっと不気味なのもありますが。私は「ビーニー・ベイビーズ」と「ピロー・ペッツ」の間にいましたが、右のほうで何かが床に落ちたのを見ました。
それはぬいぐるみの猿でした。紫、モスグリーン、ピンク、うずくまった四角い胴体、小さな脚。そして赤い目に、赤い鼻、口はありません。
私はその小さなぬいぐるみを拾い上げました。どこから落ちたのかわかりませんでした。同じようなぬいぐるみはどこにも陳列されてなかったんです。混乱し、店員さんに尋ねました。
「あれ、おかしいですねぇ。このぬいぐるみについては私どもの扱っている商品ではないかと存じます。おそらく、前に来たお子さんが忘れていっちゃったのかもしれません。」
彼女はそういって、そのぬいぐるみを無料で持って帰っていいと言いました。確かに、私に料金を請求することはできないですよね。私は猿のぬいぐるみを家に持ち帰り、自室においておきました。「シュレッダー・モンキー」…間違いありません。9年前、あの奇妙なガソリンスタンドで買ったシリアルの箱に描かれていた猿と同じです。あれ以降、あのシリアルを見かけたことすらなかったのに。
ずっとシリアルを探していたのに…
私は毎週、母と一緒に買い物に行っていた地元のVons(スーパーマーケット)でシュレッダーショックを探していました。決して棚に並ぶことはありませんでしたし、店員さんに尋ねてもそんな商品聞いたこともないという反応でした。そしてGoogleでもシュレッダーショックを検索してみましたが、砂上を走るラジコンカーやら、ミュータントタートルズのエピソードやらが出てくるだけでした。
まぁ、そんなに大きなショックじゃありませんでした。シリアル自体は、特筆してまた食べたいと思うものでもなかったんです。コンビニでも探してみましたが、結果は同じでした。私は最終的に、あんな辺鄙なところにあるガソリンスタンドでは、地元限定の食べ物や、既に生産終了した商品を売っていたに違いないと仮定しました。
しかし、突然シュレッダー・モンキーが私の人生に再び現れたのです。
少なくともまだそのときは、恐れという感情はありませんでした。私はぬいぐるみを何人かの友達や従兄弟の友達にも見せたりしました。誰もそんなぬいぐるみ見たことがないらしく、シリアル箱、アニメ番組、インターネットなど、どの媒体でもそのキャラクター自体を見たことがないとのことです。少なくとも皆の前に、彼は現れたことはないようです。
5年後、今年
そして5年が過ぎ、今年。3日前のことです。
私はグレンドラ(カリフォルニア州)の小さな民営の救急車会社に勤務しています。シトラス大学をAAで卒業しましたが、お金を稼ぎ、良いBSNプログラム(看護研修)を受けるために、すこし楽な仕事をしたかったのです。実際、救急搬送会社の救命士としての仕事は楽です。業務の90%は、昏睡状態でベッドに横たわっているご老人を、透析室に運び入れたり、運び出したりすることなんですから。
その夜、大体19:00ごろ、私の相棒のベン・シスネロスと私は聖ガブリエル腎臓センターに派遣され、患者さんを運び出しました。この患者さんを仮にヘンリー・ガフィガンさんとします。私達はヘンリーさんをサンシャイン療養所に搬送しなければいけませんでした。そこは常に汚物まみれの施設です。私達は朝8:00から働いていたので、ヘトヘトでしたが、残業とか文句をいうことはできません。私達は腎臓センターにつくと、ストレッチャーに彼を乗せ車に搬送しましたが、相棒のシスネロスが酸素バッグを腎臓センターに忘れてきたことに気づきました。彼は私を置いて、建物に戻ってしまいました。
ヘンリー・ガフィガン
ここでヘンリー・ガフィガンさんについて少々。
ヘンリーは96歳で、体重は約40kg。彼は、貧血、心不全、パーキンソン病まであらゆる病気を網羅しています。精神的な面では、私達は「a/o times 0」と称しており、彼は自身の名前、所在、今日の曜日、何が起こっているのかを伝えることができない状況です。実際に、彼は全く話すことができません。ほとんど我々のほうを見ているだけです。萎縮した脚や、右腕は筋肉が衰え、左腕は2回目の脳卒中でラグドール麻痺を患っています。彼の背中は硬直しており、車椅子に座ることすらできない状況です。彼は継続的に酸素を吸引しており、透析後には血圧が低下するため、腎臓センターから911に2回ほど緊急通報がされたことがあります。
ニュー・オウダー・エイ・ガード
「どうも、ヘンリーさん。血圧をお計りしますよー、いいですね?」
私は彼に元気よく、そういいました。彼は私を見つめます。
私は彼の左腕の周りに手動の血圧計を巻いた。透析装置では112/54と極めて健康的な数値が表示されていましたが、この装置は実際より高めの数値を表示する傾向があるんです。私は聴診器をつけて、脈を取ろうとしました。そのとき、なにか彼が囁いたのです。
「ニュー…オド…」
私は聴診器を落としてしまいました。ありえない。しかしなお、彼の唇は動いていました。
「ニュー…オウダー…エイ…」
声は、もうどれだけ使われていないのかわからない萎縮した声帯から、弱々しく発せられていました。
「ニュー…オウダー…エイ…ガード…」
私は口をあんぐりと開けて、彼を見ました。ヘンリー・ガフィガンさんは喋れないはず。3年間、透析に搬送していましたが、いままで言葉を聞いた事はありませんでした。
「ガフィガンさん!名前、教えていただけます?」
私は興奮しながら尋ねました。
そして彼は座ったのです。
いや「座る」とも言えません。彼の背中が腰の部分で垂直に折り曲がっていたのです。手で支えてもいませんし、背中も曲がっていません。まるで、昔のモノクロ映画でドラキュラが棺桶から起き上がるかのような姿で、ただまっすぐに座ったのです。彼の鼻につけられた酸素吸入器の管は引っ張られ、抜けてしまいました。
彼は人形のように、彼の頭を私に向かってひねりました。
「ニュー!オウダー!エイ!ガード!」
彼は叫びました。
彼の声は機械的でした。金属的。まるで、鉄パイプから聞こえてくる声のようでした。もっとも私が戦慄したのは、意味不明な言葉がガフィガンさんの口からではなく、私の周り、空、地面、私の顔の前から聞こえてきたような気がしたことでした。
私は絶叫しました。必死になって、バックドアを開き、救急車から飛び出し、アスファルトに躓き転んでしまいました。私の相棒が駆け寄ってきます。彼は酸素バッグを持って戻ってきたのです。私は自力で立ち上がりました。彼が私に眉をひそめます。
「大丈夫、ゴメス?」
「ガ、ガフィガンさん…彼…彼がしゃべったの!聞いたことある?!」
私はテンパっていました。
彼は私を変な目で見ると、酸素バッグを取り付けるために車に戻りました。彼はすぐ、ガフィガンさんの注意を引くべく、ガフィガンさんの名前を繰り返し呼んでいるようでした。
「ほんとに言ってんの?」
彼は私に疑い深く尋ねてきました。
「僕にはいつもどおりに見えるけど?とはいえ、君は酸素を入れ忘れたね?」
平静を取り戻した私は、彼と一緒に車に戻りました。ガフィガンさんはストレッチャーの上の元の場所で動かずに横になっていました。血圧計のベルトはまだ左手に巻かれていました。鼻の吸引機は外れ、傍らにぶら下がっていました。
もしこの時点で一切の恐怖を忘れることができていたといったら、嘘になります。私が療養施設まで運転をしている間、相棒がヘンリー・ガフィガンさんの様子を観察していましたが、ガフィガンさんは何もおかしなことはしませんでした。彼は以前の搬送からそうであったように、昏睡状態で、しゃべることも動くこともできない状態です。私が狂っていたのでしょうか。聞いたことも見たことも、覚えているんですよ?
言葉自体は、意味不明でした。そんな言葉知りません。
家に帰り、すぐにガフィガンさんが発音した音節を紙に書き出してみました。それ自体は簡単でした。恐ろしいかったので、脳裏に焼きついていたのです。
New、Odor、Eigh、Guard
私はそれに戸惑いました。心の中で言葉を繰り返しました。何度も何度も。組み合わせたり、虫食いかと思ったり、何の意味もないのかと思ったり。そしてわかったんです。
15年前のあの言葉
私はまだ両親と暮らしています。便利だからです。家賃も掛かりません。そして、両親は私に関するもの、小学校時代の課題だったり、高校の教科書、子供の頃のおもちゃなどを屋根裏部屋のかわいらしいダンボールに入れて保管してくれています。その晩、私は弟のホセと私のとある古い本を探し当てるまで、箱のなかをごそごそ探りました。
『Bunnicula』, 『Baby Sitter’s Club』, 『Harry Potter』, 『Beverly Cleary』… 『Goosebumps』. 『Goosebumps』 3巻, 15巻, 23巻, 12巻, 7巻, 36巻…
ビンゴ!『Goosebumps』9巻!そう、14年前に私がタホへの長いドライブで読んでいた本です。私は例の空白のページまでパラパラめくりました。
GARD NWODR EH
私はその本を寝室に戻し、ノート上で言葉を並び替え、ガフィガンさんが吐き出した言葉と比較しました。
Nwodr Eh Gard
New Odor Eigh Guard
一体何なんでしょう。
たぶんこれのことは私の頭から離れないでしょう。名前もわからないような昏睡状態にある患者が発した言葉と、14年前に古びたガソリンスタンドで発見した見たこともないシリアルの箱に書かれた言葉。私はそのつながりがわからず、今、混乱しているんです。
あの声。金属的な声。私は本棚の上のぬいぐるみたちの中に紛れて座っている、あのどうぶつのぬいぐるみを見つめていました。うずくまった体、モスグリーンの手のひらに、ピンクのお腹、紫色のぬいぐるみの猿。細長い腕、小さい脚。丸い頭、赤い目と鼻。
そして、口はありません。けど、きっと可愛らしく笑っているに違いないですよね!
ブログエントリー:2014年9月8日
ガフィガン氏の部屋
ヘンリー・ガフィガンさんがお亡くなりになりました。シスネロスと私は彼が喋った夜以来、彼からの緊急通報がなかったので、感謝していたんです。でも、それも昨日までの話。私達はガフィガンさんをサンシャイン療養所から聖ガブリエル腎臓センターに搬送するように指示されました。正直、ヘンリー・ガフィガンさんの名前を聞いたとき、私の血の気は一気に引いてしまいました。サンシャイン療養所のドアに入るとき、体はガクガク震えていました。しかし、肝心の彼の部屋に入ろうとしたら、いい加減で態度の悪い看護師に止められたんです。なんと、ガフィガンさんは昨日お亡くなりになったのです。明確な理由は不明で、彼の血圧は急激に低下してしまい、その場でご家族が延命治療を希望しなかったそうです。
通常なら、こんな知らせには驚きません。彼は高齢でいらっしゃったし、サンシャイン療養所は薬の誤投与で有名なんです。シスネロスがお手洗いに行って、私はヘンリー・ガフィガンさんの部屋の前に取り残されました。なんとなく、ドアの窓から彼の部屋を覗いてみると、ガフィガンさんのベッドのそばの壁面に目がいきました。壁には黒いインクで描かれた小さな絵がありました。
「あー、あれね。きっとルームメイトですよ。だって、ガフィガンさん、動けなかったでしょ?」
看護師の人が言いました。
しかし、私にはそうは思えませんでした。
直線と三角形…私はそれを見たことがあるんですよ。ずっと前にCHALKのチョコバーで。
みなさん、これ何なんですか?何が起きているんです?
ブログエントリー:2014年9月15日
迷路の夢
今日、正午に起床しました。母は、私が病気であると職場に伝えてくれました。睡眠をとったほうがいいと思ったんです。母も心配してくれていたのでしょう。私は先週からあまりよく寝てません。ヘンリー・ガフィガンさんがしゃべってから…特に彼が亡くなってからは、本当に寝れてません。
私は同じ夢を何度も何度も見てしまうんです。迷路の中にいて、出口を見つけたと思ったのもつかの間、すぐ壁にぶつかり、最初からやりなおし。壁、いや壁って言っていいのかな…目にも見えないし、触れることもできないんです。でも、どういうわけか夢の中の私はそれ以上進めないとわかっているんです。見えるのは乾いた一面の黄色い草原。無限に広がっているように見えます。空は晴れていて、雲ひとつありません。暖かかったような気がします。
迷路の怪物
私はそんな見えない通路を辿って走っているのですが、誰かに追われていることがわかっていて、極度の緊張状態にあるんです。それは目視できません。ただ、音楽の授業で使ったリコーダーのような高い音で、何かの歌詞を囁き歌っているような音が聞こえてくるんです。何を囁いているのかはわかりません。それは、英語、スペイン語、はたまたこれまで聞いた全ての言語でもないのかもしれません。そしてその嫌な囁きは猫のようなが草の上を歩くような足音と共に近づいてくるのです。私が振り返ると、囁きや足音は止まり、静かな何もない空間をただただ見つめているだけ。
昨夜、私の髪の毛が揺れ、何かが近づいていると感じました。目の前の草は動いていなかったので、風ではありません。
言葉にできないほどの恐怖で、私はいままでより速く逃げました。私の後ろの囁きは、それが3拍子のワルツのようなリズムであると気づけるくらいまで、大きくなっていました。囁きは、ハミングからメロディに、そして最終的に辺り一面から聞こえてくるようになったのです。そして誰かが私の肩を掴みました。
細長く、灰色の鱗があって、筋肉質で、ところどころ黒い毛に覆われている腕…
私がその恐ろしい腕の持ち主と対峙すべく振り返ったのですが、ただ汚れた白色と灰色の天井が見えただけでした。漆喰の天井。目が覚めてくれたんです。
ブログエントリー:2014年9月22日
謎の夢
私はどうかしてしまったんでしょうか。そうに違いありません。小さな子供だったころから悪夢なんて見たことなかったのに、突然わけのわからない明晰夢を見て、起きたら目眩と吐き気に襲われたんです。
私はこの前のブログエントリーを書いた後、コンビニまで運転し、睡眠薬を買いにいったんです。私がまだ赤ん坊だったころ、週に4回は夜泣きをしていたらしいのですが、そのたびに母がひとさじの咳止めシロップを与えてくれたそうです。どうやら、母は不眠の解決方法をよく知っていたようです。まるで赤ん坊のときのように、1粒の錠剤が私を深い眠りに落としてくれたんです。昨夜、私は薬の箱を枕元に置いてはいたんですが、カリフォルニア大学のオンライン授業で3単位取得するために、ちょっと長く起きていたかったんです。
少しおかしい
…気づくと、朝になっていました。私は起きて、シャワーを浴び、車から駅まで歩いてました。シャワーを浴びてから、出勤する習慣があるんです。職場のドアを開け、タイムカードを受け取るべく受付に行きました。受付の人はメアリーという若い女性です。
「ゴメス!」
彼女が叫びました。
「あ、あなた何故…ど、どうやって!?」
「何か問題でも?」
私は彼女の言葉を遮って尋ねました。
「始業は8時のはずよね?またラングドンさんが相談もなしにスケジュール変更したの?」
「でも…」
メアリーは言いました。
「しかし、あなたはここの従業員ではないはずです。警察の方がそう…なんで刑務所から出たんですか?」
刑務所?ハァ?
メアリーはちょっとイタズラ好きな女の子ではありましたが、彼女に見られた混乱と衝撃は演技とは思えませんでした。
「なんか薬でもヤってんじゃないの?」
私は笑っていいました。
「昨日もここにいたじゃない」
しかし明らかに、メアリーは真剣でした。日付は間違いなく、2014年9月17日。しかしシフト表が前日に見たものと明確に異なっていました。見覚えのない名前がいくつか書かれています、ジャルディエル?オウ・ルーク?ラング?…そしていくつかの名前が消えてしまっていました。私もそのうちの一人です。
「ゴメス?」
私は振り向きました。シスネロスが後ろに立っていました。ただ彼は何かが変でした。ヤギのようなあごひげを生やし、長髪を後ろでポニーテールのように結っていたんです。昨日は、彼はひげをしっかり剃って、坊主頭だったはずなんです。
「ゴメス…アリ…おい、一体どういうことだ?」
彼はメアリーのように、私を見るや否や仰天しているようでした。
「何が起こっているの?」
私は震える声で尋ねました。
「スケジュールどおりじゃないの?」
「ええと…」
彼は眉をひそめ、後ずさりました。
「アリ、僕は君や皆がいなくなってさびしいよ?でも、ラングトンさんは復職を許さないと思うんだ。君はどうやってここに来たんだ?僕は、新聞で君は8年の懲役に科せられると…」
「8年?どの新聞?何が起こっているの?」
シスネロスはもう一歩後ずさりました。正面玄関が開き、重々しい足音が聞こえてきました。チャーリー・グリーンさんが入ってきたのです。彼は1.9メートルの大男。受付から叫び声が聞こえました。メアリーが目を覚まし、ヒステリックを引き起こしたのです。
「彼女を掴まえて!」
メアリーが男たちに叫びます。
「彼女をオフィスに閉じ込めて!」
私は現状を把握できないまま、背中の後ろに手首を拘束されました。シスネロスは固まっていました。グリーンさんはシスネロスを押しのけると、私をぐいっと持ち上げて、肩で担いで、ラングトンさんの執務室の前で落としました。彼がドアを叩くと、解錠される音が聞こえました。
私は立ち上がってラングドンさんの机の電話の方に走りました。両親、もしくは親友でもいい、誰でもいいから昨日の世界と今日の世界の不一致を説明できそうな人と連絡したかったんです。請求書の束の下からはみ出していた、新聞の見出しが目に入りました。8月20日付けのロサンゼルスタイムズの記事…
『元救命士、飲酒による危険運転過失致死により8年の懲役確定』
昨日、ドゥアルテ在住のアリアナ・ゴメス(22)は、危険運転過失致死罪による懲役8年が宣告された。2014年1月5日未明、ホームパーティからの帰路、高速道路へ向かっていたゴメス氏は、パサデナのフットヒルとローズミードの交差点で赤信号を無視し右折。自転車に乗っていたアダム・エン氏(20)に衝突し、その後救急搬送されたが、死亡が確認された。ゴメス氏の血中アルコール濃度は0.14であり、これは法定上限の約2倍に相当する。
記事を2度読みました。私は拘束を解き、その後、喉が焼けるほど叫びました。膝を落とし、意識が遠のきました。世界がぐるぐる周り…視界が暗くなって…ドア、ドアの開く音、そして、グリーンさんの声。
「おい、彼女はどこへいったんだ!?」
夢だったのか?
そして気が付くと、漆喰の天井を見つめて、目は充血していました。枕もとのランプが点灯しており、ノートパソコンが開いています。私は時間を確かめました。6:18。目覚ましのアラームが鳴るまであと12分。右腕に鈍痛が走り、頭がクラクラしました。私は横になって、床に嘔吐しました。私はベッドから出て立ち上がろうとしましたが、体勢を変えるや否や部屋がぐるぐると回り始めました。冷や汗がだらだら流れました。
私は何が起こっているのかわかりません。人生で今までにない奇妙な夢です。夢と気づくことさえできませんでした。私は駅にいました。私は相棒と会話していました。メアリーの手の感触もまだ覚えています。夢の中のすべてが全く身に覚えのないことではないのです。
記憶とのズレ
私は1月4日、友人のキャスリンの誕生日にパサデナでパーティをしていました。私は多少のアルコールは摂取していたものの、まともに話すことも、まっすぐ歩くこともでき、真夜中ごろには家に帰ることができたと思っていたのです。
でも、帰ってなかったんです。
私にはもう1つの記憶があります。私は靴を脱いで、キャスリンのソファの上で寝てしまい、9時間後に目を覚ましたんです。キャスリンとジェニー・ワンという彼女の元カレが私の肩を叩いて起こしてくれたんです。
しんどい
私はベッドに戻る力がなく、床のカーペットの上に倒れていました。職場に休む旨の電話をしました。応答したのはそう、メアリー。平静を保つのが精一杯でした。
数時間後、シャワーを浴びていると、右肩に紫色のあざができているのに気づきました。もし夢の中でチャーリー・グリーンさんが私を落としたような衝撃がなければ、こんなあざ付くわけありません。
ブログエントリー:2014年9月24日
遠くの影
おかしくなりそう。変になりそう。睡眠薬はもう効きません。私は昨夜再び迷路、青空の下、一面に広がる黄色い草原に戻りました。私は走っていました。これが正しい道。そう思えました。迷路から抜け出せる、追っ手から逃れられる、その先は…知りません。高速道路を見つけて、ヒッチハイクでもします?私の夢の中では、そんな先のことなんて考えていませんでした。
しかし、私は走り続けました。これに人生がかかっていると直感しました。そして、再び囁きが聞こえてきました。同じメロディーのように思えましたが、今回はなんだか違いました。私は立ち止まり、周囲を探りました。私は一人じゃない…。遠くに灰色の影が見えました。
私の謎の迷路に入ってきたのが、誰なのか、何なのか、少なくとも数百メートルは離れていたので、人なのか動物なのか機械なのかわかりませんでした。同じメロディーが繰り返され、聞いているうちにその音がその影から発せられていることがわかりました。
私はもといた道に戻って、自由の為に走りました。息は絶え絶え、足はもつれます。汗が全身を流れていきます。ふと、左を見ました。びっくりして心臓がとまりそうになり、草の上に転んでしまいました。
15年前のあの場所
錆びた板金の小屋。平らな屋根。窓がなく、木製のメッシュのドア。燃え尽きたネオンサイン。
その建物の前には、私のいままで見た中で、もっとも恐ろしく、忌々しい光景がありました。呼吸してる。丸い目で私を見つめてくる怪物。鋭い声で知らない言葉を叫んできました。
体は灰色のずんどうで、高さは約1メートル。乾いた皮のようなもので覆われていました。膿が溜まり膨らんだようなブツブツ、気持ち悪い黒い髪の塊がところどころに。その体に、白っぽい粘液で覆われた手の平が網目状に絡まった触手で繋がれてました。胴の中ほどには、乾燥した木の根っこのようなものが3本飛び出ていました。円筒形の胴体の上には、まるでそこに蓋をしているかのように、不透明の黒い液体がつまったストレスボールのようなものが付いていました。この頭?に取り付けられた3つの真っ白な球体は、まばたきもせず、うごきもしませんでしたが、確実に私を捉えていました。
私は叫んだんだと思います。逃げ出そうと思いましたが、腰が抜けてしまっています。芝生の上で、仰向けに倒れこんでしまいました。倒れたとき、草の粗い茎で私の腕に傷が付きました。視界には青空。すると体が落ちていくような感覚に襲われました。落ちる。草の中、地面の中、地球の奥深く。灰色の怪物が、掘り返してる。フルートのような叫び声が。
最後に覚えていることは、私を見下ろしているモノです。赤い鼻が目立つ、小さな緑の耳、紫色の球体。細長い腕、紫色の毛皮。口はわかりませんが、赤い目が鮮やかに光っていました。
父の証言
目を覚ますと、朝の曇天の光が私の部屋を照らしていました。私は紫色の球体の赤い目が私をを見ていることに気づきました。ソレの手が届くことを想像し、叫びそうになりました。
ただ、それすらも幻覚であることに気づきました。ただ私は棚の上で座っているぬいぐるみを見つめていました。
私は後で父と話しました。何年も前のタホへのドライブに関して、彼に尋ねたんです。彼はドライブで、そのようなガソリンスタンドに立ち寄ったことはないとのことです。彼はそのドライブについては覚えているようで、私が読んでいた『Goosebumps』の本については覚えているようです。しかし、そんなガソリンスタンドには止まっていない。ドライブ中はずっと雨が降っていて、私は後ろで寝ていたそうです。
私に一体何が…
ブログエントリー:2014年9月26日
寝れない。眠れない。
現れたシュレッダー・モンキー
私は今日、ソレを見たんです。シュレッダー・モンキーを見たんです。
ダウンタウンに向かう途中、ウィルシャーとアルバラド周辺の農協市場の駐車場で立ち往生しました。私はソーダを買うために、救急車から出ました。そして通りを見渡しました。そして、ソレはいたんです。歩道のブロックの下に座って、私を見つめて。
少なくとも、人間と同じくらいの大きさでした。遠くからは、ディズニーランドの着ぐるみのようにも見えました。太く、うずくまった体。重そうな体と頭を支えるには物理的に小さすぎる脚。細長い腕。一方は地面についてましたが、もう一方は私に向かって伸びていました。紫の体、緑の手。腹部のピンクの丸。鮮血の目。ソレは動きませんでした。
でも、私を見ていました。
そして私は車のドアを開け、シスネロスに見るように叫びました。しかし、ソレは消えてなくなっていたのです。私は救急車から飛び出て、巨大な猿を見た場所、街灯と消費者金融の事務所の間の歩道のブロックまで走っていきました。
何もない。紫の毛一本も落ちてない。
シスネロスはいままでの私の言動に対し、心配半分、嫌悪半分の視線で見てきました。私は彼に夢のことを話していませんが、私に何かが起きていることには気づいているようです。彼は大丈夫かどうか聞き続けてきます。どうやら、チャーリー・グリーンさんが私は「メス犬の目」をしていると噂しているようなのです。
人形を屋根裏部屋へ
怖い。想像に過ぎないと言い聞かせてます。睡眠不足、仕事のストレス、学校の授業への適応、すべてが合わさったものが棚の上の猿に宿っているだけ。その猿は寝ているとき目に入るから、その悪夢や幻覚を見るんだ。私はその人形を屋根裏部屋に放り投げました。きっとこれで大丈夫。
それでも、見たものの記憶はなくなりません。猿を見たのは間違いないんです。ヘンリー・ガフィガンさんが話しました。彼の部屋の壁に書かれている文字を見ました。グリーンさんが私を落としたときの痛み、メアリーが私の手を拘束した痛みも感じました。ただ、肩のあざや、腕の切り傷、そして板金小屋の記憶、灰色の鱗に覆われた怪物の記憶…それらさえなければ、ただの夢だったと片付ける事だってできるんです。
寝たくない。もう、見たくないんです。迷路にいきたくない。薬はもう効きません。怖い。
助けてください。
ブログエントリー:2014年9月28日
今日は幾分気分がいいです。昨日は2時までには眠りに付きました。起きてからは、ずっと部屋でNetflixで『Bad Breaking』を見ました。そして今は日曜の朝。なんだかすっきりして世界を見ることができます。ちょっと皮肉まじりな表現ですが。私は金曜日に見た夢で物事をじっくり把握することができたんです。
金曜日の夢
私はまた迷路にいました。ご存知、快晴の暖かな気候、一面の黄色い草原。私は錆びた板金小屋を見ることはできましたが、それは遠くにありました。
私は穏やかで、意識ははっきりしていました。夢を見ているんだ、そうわかったんです。確かシトラス大学の心理学の授業で、夢を操作するには、夢を見ていることを意識しなければならないとかなんとか。この場所、この迷路は、すべて私の作り出したものなんだと思うことにしました。
灰色の腕が私の肩を掴み、私をその怪物のほうに向かせました。
私は怪物と対峙したんです。
ソレは3つの球体をつけたストレスボールをつけて、バランスを保っていました。円筒形の体は傾いており、ストレスボールは地面スレスレ。触手は髪の毛のように垂れ下がり、粘液が滴り落ちていました。ストレスボールについた3つの球体は瞬きも、動きもしません。
語りかける怪物
「こんにちは。」
ソレは言いました。
「お名前を教えてください。」
その声は心地よいものでしたが、銀行に電話したとき、口座番号を読み上げる自動録音を彷彿させました。私は怪物が新しいアクセサリーをつけていることに気がつきました。それは灰色の円筒状の胴体とゼリーの詰まった頭の接合部分を覆う、灰色のスカーフのようなものでした。
そして、ソレが私に英語で話してきたことに気づきました。
「あなたはな…誰なの?望みはなに?」
「恐れてはいけません。」
ロボットの声で言いました。
「私はあなたに助言するためにここにいます。私のコミュニケーションの下手さをお許しください。私の体はあなたの言語を作成することができません。私が使わざるを得ない方法はあなたの種には馴染みのないものかもしれません。」
私はスカーフのようなものが「方法」だと思いました。
「えぇ、大丈夫。」
私は答えました。
「ぁぁ…あなたの名前は?」
「フィーフィー」
それはそう聞こえるような音を口笛?で鳴らしました。
「わかった、フィーフィー」
私は慎重に言いました。
「あなたの助言って?」
「あなたは私自身に似ています。あなたは平行世界を行き来できるんです。」
はぁ?!
「無限の数あります。決定をするたびに、その反対の決定の世界ができるのです。いくつもの平行世界が、互いに積み上げられているのです。」
「あぁ」
私はわかりました。
「代替次元みたいなやつね。ストリング理論、聞いたことあるわ。」
「あなたは前に別次元にいました。それはあなたの世界のようでしたが、そうではありませんでしたよね。」
「そんなことな…」
私は否定しようとしましたが、フィーフィーが正しいことに気づきました。あの夢。飲酒運転。自転車の青年。刑務所。
「あなたはその後、具合が悪くなりましたね?」
「はい…」
もうわけがわかりません。
「私は夢を見たの。その後、調子が悪くて、ほとんど病院に行かなきゃいけない状態だったの。これって、異次元に行ったってことなの?」
「はい。肉体を伴う次元移動は困難です。遠い次元になればなるほど難しくなります。あなたの旅した次元は、数十億離れた次元でした。私の次元では、能力者は近くの次元から訓練するのです。」
「あなたの次元?」
私は尋ねました。
「あなたは別の次元に住んでいるの?」
「私の次元は、ここから数千兆も離れています。数十億年前、小惑星が衝突し新たな星ができました。私の次元は、北に向かった小惑星の衝突。あなたの次元は、南に向かった小惑星の衝突後のものです。」
「あなたの次元…」
私は繰り返しました。
「それは、ここなの?」
「いいえ。ここは次元の狭間です。危険な場所です。この迷路を作ったのは、ここが危険だからです。」
「待って。このばかげた迷路は、あなたのものだったの?」
私は叫びました。
「だから、あなたは何週間も私を追い回してたの?」
「体と精神、両方を捕捉することは困難でした。あなたはいつも消えてしまいました。」
「いや、あなたが消えたんでしょ?」
私は主張しました。
「そしてなんでここに閉じ込めようとするのよ?」
「あなたを閉じ込めようとしているわけではありません。彼を出さないようにしているんです。」
私の怒りは、気づかぬうちにパニックに変わっていました。私は「彼」が誰であるか知っていました。私は辺りを見渡しました。
「彼はここにはいません。」
フィーフィーは安心させるように言いました。
「彼は邪悪で、破壊だけを望む化け物です。彼はすべての次元の片隅にいます。私の世界では『シシュ・ヴォウィズ』と呼んでいます。私達はその化け物はサイハテに閉じ込められていると聞いています。」
「彼は悪魔なのね」
私は呟きました。脈拍は速くなり、手には汗がにじみます。
「『地獄』、私達の世界では彼が来る場所をそう呼んでる。」
「ここは彼が潜んでいる場所のひとつです。」
フィーフィーは続けました。
「彼は四角い箱を作りました。体が無意識の状態にあるとき、この空間を彷徨う能力者が魅力的だと思う仕組みになっているような箱を作ったのです。」
「彼…あ、わたし、一度そこに入った!」
私は驚きました。
「シリアルを買う夢…彼は猿よ!!」
「彼は多くの形を有しています。あなたは彼の果実を食べてしまったのです。これにより彼はあなたの意識に干渉でき、あなたを見つけ、追いかけることができたのです。彼はどんなことをしているのですか?」
「えぇ!」
私は興奮しながら言いました。
「私は彼のような見た目のぬいぐるみを見つけたの!」
「それはマーキングです。他の悪魔に、あなたに手を出させないようにするために、彼が仕組んだのでしょう。しかしまだ彼は目標を達成していません。なぜなら、彼はあなたの体と精神を蝕むほどの強さをまだ有していないからです。その間、彼は弱い心の持ち主を奪っているのです。」
「ガフィガンさん!」
私は怖いはずでしたが、頭は回ってました。
「彼は…彼は昏睡状態の老人だった。猿は彼をもう所有していたのよ!彼は壁に文字を書いたの!」
「文字は猿によるものではありません。私によるものです。私は猿の行った精神の道を辿り、同じように弱った意識を支配しました。私は長い間留まるほどの力を持っていませんでした。私の支配していた精神を収容していた肉体ももう限界のようでした。ただ、あなたは私の世界の言葉を知らずとも、見たことは思い出したはずです。」
「なんとかしてよ」
私は彼(彼女?)に要求しました。私はすぐに自分の発言の無礼さに気づき、恥ずかしくなりました。しかし、フィーフィーは怒っていたとしても、それを上手に隠してくれました。
「私達はお互いに幼かった頃、その四角い箱の中で会っているのですよ。私の師匠達は私に、この場所から離れて商品には決して手を出してはいけないと言っていたのですが、私は好奇心旺盛でした。そして、私はあなたを見て、止めようとしたのですが、私は肉体を保つことができなかったのです。」
私はその日に聞いた足音を思い出しました。私が、スナックショップで見た数々の解読不能な言語の食品。悪魔の猿は、幅広い罠を仕掛けたに違いありません。いろんな次元の子供達がそこに入り、そこの馴染みある甘くて美味しい商品に手を出してしまうように誘惑したのです。こんなの本当に狂っている幻想のようにも思えます。でも、ここ数週間で、初めて出てきた理にかなった説明ではあります。私は怖いです。でも、相手が何者なのかを知ることができたので、少し心を強く保てました。
「それで、」
私はフィーフィーに尋ねました。
「この悪魔の猿は私を葬りたいの?魂とか何かを食べたいの?」
「彼はあなたそのものを欲しがっているのです。」
とフィーフィーが感情的に説明しました。
「そして、彼は非常に強力です。どんな能力者よりも強いです。最終的に彼は次元に侵入し、あなたの世界で物理的な肉体を得るでしょう。」
「彼はもう肉体を持ってる。もう見たのよ。どうやって彼を止めるの?」
私の上空がぼやけ始めているのに気がつきました。私の周りは霧に包まれ、私は黄色の草原と青空の境界線も判別することができなくなってしまっていました。私はフィーフィーを間近で見ていたのにも関わらず、灰色の霧の中に消えてなくなってしまいました。私は起きようとしていたんです。ここで起きちゃだめなのに!
「フィーフィー!」
私は必死に叫びました。
「どうやって止めるの!?」
霧が深くなっていきました。私はもはや草原にはいませんでした。霧の中、フィーフィーらしき輪郭は見えます。ですが、その後、反応はなくただ影だけが見えるだけでした。
「次元を移動しなければなりません。」
フィーフィーの声がまるで録音のように繰り返されました。
決意したアリアナ
気づくと、私は天井を見つめていました。光がブライドを通って部屋にさしこみ、目覚まし時計のアラームが鳴り響いています。
その日の夜は夢を見ませんでした。
私はこのブログを書いていてよかったと思います。自分の思考を吐き出し整理する場所がなければ、既に狂っていたかもしれません。そして今、フィーフィーにもう一度会うことがないのであれば、自分で悪魔のシュレッダー・モンキーから逃れる方法を探さなければなりません。
ええ、最後の言葉はハリーポッターみたいな創作みたいですよね。実際にもう私は狂ってしまっているのかもしれません。しかし、狂ってしまうのと、紫のアイツに食べられてしまうのと、どっちがいいかと聞かれたら、俄然狂ったほうがマシですよ。
ブログエントリー:2014年9月30日
昨日、十字架のネックレスを着け始めました。バックパックの底には聖書が常に入っています。シュレッダー・モンキーが宗教的な象徴を恐れているかどうかは定かではありませんが、やらないよりはマシです。
再来
私は再び彼を見ました。
私たちは患者さんの透析が終わる17:00頃、マックアーサー透析センターの外で待機していました。私は救急車で一人でした。シスネロスはお手洗いに行ってました。車はアイドリングしており、ラジオが付いていました…ふと視線を感じました。
彼の紫色の顔が窓に押し付けられていたのです。
今までで最も近距離です。あまり知らなかった細部まで、見ることができました。紫色の毛皮は、屋根裏部屋に放り投げたぬいぐるみと異なり、単色ではありませんでした。それは汚れに、汚れていました。彼の赤い鼻は犬の鼻に似ていました。皮で覆われており、汚らわしい、緑色の粘液が垂れていました。彼の目は、ビーズのようでも、フィーフィーのそれのような無機質な球体でもありませんでした。黒い瞳に、禍々しい光を宿していました。
彼は楽しんでいるようでした。
私はあまりの怖さに叫ぶことも叶わず、ただ見つめ返すことしかできませんでした。鮮やかな赤い鼻の穴が広がり、窓に鼻息をかけていました。鼻は私の想像と異なり、かなり肉々しいものでした。その後、彼は鏡言葉が書いたのです。寒い朝、子供が結露した窓に文字を書くように何かを書いたんです。
彼から見ると、NWODR EH GARD(鏡文字)
私から見ると、DRAG HER DOWN(「彼女を引きずり降ろせ」)
そしてドアが開く音が聞こえ、私は叫びました。シスネロスが怒鳴り、運転手の席に座りました。何があったのか尋ねる気もないようでした。どうやら、彼は真剣に私を軽蔑し始めているようです。
ブログエントリー:2014年10月1日
今日は猿と遭遇していません。私は一日中、私を軽蔑する視線、影で言われている悪口、等などに悩まされてます。彼が私を悩ませているということはわかってます。鏡文字が意味しているのはそういうことです。私を引きずり降ろす。
なんであれ、彼はゲームを楽しんでいるんだったら、私だって彼をどううまく出し抜くかを考えるしかありません。
逃亡
私の両親が屋根裏部屋ですべてを保管してくれているということを覚えてますか?
仕事終わりに、そこに行ったんです。私は箱の中を探りました。ベビー服、ホセの昔のサッカートロフィー、アルバム、楽譜、粘土の作品、自由研究…ついに見つけました。
『KIDS 1997』と書かれた湿気っぽい箱の底にある忘れ去られたボール紙のファイル。クレヨンで描かれた絵。「アリアナ」というサイン。小さな子供は、その想像力に導かれ、論理や合理から解放され、彼女のより古い自己が保持されている場所に行くことができたのです。
1枚は、赤い家(私のは茶色です)で父、母、ホセ、アリ、ノエミ、ロベルトの6人家族。描いた後、私は忘れてしまっていたんです。私の母が、もっと子供を作ろうと思うと私に話してくれたとき、それを受けて私はその絵を描いたんでした。一度もあったことのない人と遊ぶクレヨン・アリアナ。家や学校、公園、一度も言ったことのないような場所もかかれてます。何人かの人は少々妙でした。顔のパーツの配置が変だったり、鼻が大きすぎたり、腕や脚がたくさんあったり、指に目が付いていたり。
シュレッダー・モンキーはここにいる私を見つけることができます。少女のときのように、この絵のような次元に行くことができたなら…彼は追っては来れないはずです。その後は…その後については考えられません。たぶん彼は私を忘れるんじゃないでしょうか。彼はまたあのお菓子の罠に戻って、次の不幸なトラベラーを待つんでしょうね。いずれ私が次元旅行を続けていれば、いつかどこかの次元で彼と戦う術を教えてもらえるんじゃないかと思います。
次元旅行
私は目を閉じました。何も考えず。日々の小さな心配事をすべて忘れ、どこにいるのかも忘れ、思考を停止し、ただかつて見た燃え尽きたネオンに意識を頭に浮かべ。
黒く燃え尽きていたはずのものが、灰色になり、原色に輝きだし、形が明らかになりました。私は、何か柔らかいものの上に座っており、周りの空気はとても暖かく心地よく感じました。ネオンの光が一層光を増し、周りが明るくなりました。小さな木製のピンクのドールハウス。本棚、茶色のシャギーカーペットにくるまれた豪華な人形。壁にはピンクのバービーミラー。疲れた顔と乱れた髪が写っていました。どうやら、私は子供部屋に飛んだようです。
扉の外から誰かがやってくる音がしました。ビックリして、身構えました。どうやって私の存在について説明すればいいのか考えてもいませんでした。2人のブロンドの少女、双子でしょうか、彼女達がやってきました。唖然として見つめてきます。
そして、次元が戻り始めました。子供部屋の明るい壁と、屋根裏部屋の暗い壁が重なってぼやけ始めました。私が冷たく、固い屋根裏部屋の床に着く前に聞いた言葉は
「ママ!ママ!お部屋にお巡りさんのお姉さんがいる!」
これはいい。いやほんとうにすごい。鏡に映る私をみました。青い制服は確かに警官に見えます。別次元にいったんです。今、しなければならないこと、それは、別次元に留まり続ける方法を知ることです。
編集長からの返信メール
*******
From:マイケル・ワイツキー(周辺科学雑誌編集長)
To:イアン・コロス
イアン、
魅力的なメールをありがとうございます。
勝手ながら、「アリアナ・ゴメス」という人物についての事や、このブログがどのように迷惑メールに貼られていたのか等を調べさせていただきました。
ご存知のように、別次元からきて孤立してしまった「トラベラー」に関する事件は過去に何件か報告されていますが、いずれもデタラメであったとされています。そして、このブログを運営している若い女性に連絡を取ろうと試みていたのですが、正直デタラメだろうと思って取り組んでいました。
編集長の調査
私はグレドラのシトラス大学に連絡を取り、過去10年間の名簿をお借りしました。その期間に「アリアナ・ゴメス」という名の女性が12名学校に通っていたことが判明しました。SNSを使い、12名全員とコンタクトをとることができました。その全員がブログとの関連性を否定、救命士として働いたこともありませんでした。
また、私は「シスネロス」という若者も探しました。なかなかの成果を得られましたよ。私はFacebookで「ベンジャミン・シスネロス」という、救急車会社に雇用されている23歳の男性を発見しました。彼は調査に協力的で、パサデナで一度会って話しました。彼には髪と髭がありました。
シスネロスはブログとの共通点を多く持っているようでした。彼は受付のメアリーと、ちょっと変な若者チャーリー・グリーンと働いているようでした。「ヘンリー・ガフィガン」については知らないとの事です。ただ、似たような症状の患者を搬送しているそうです(ご存命)。
しかしながら、「アリアナ・ゴメス」という名前の女性は知らないそうです。
ブログのコピーを見てもらいました。彼は明らかに仰天した様子でした。彼曰く、
「これは不気味だ。この子が誰かはわからない。でも、彼女の書いてることのいくつかには見覚えがある。デジャヴっていうのか。でも彼女の顔を思い出そうとしても、できない。実際には起こったことはないんだよ。」
更に、2日前、友人の姉の友人がペルシャ猫愛好家の掲示板に以下のような書き込みが投稿されているのを発見しました。インターネットの謎、いかんせん私はそれについては専門外なので、ここの時点で私はお手上げ状態になりました。
「私はアリアナ・ゴメスアリアナ・ゴメスです誰かこの書き込みをみてますか?見れますか?シュレッダー・モンキーが現れたので前のように次元移動を試みたのですが私の目の前にある彼の顔が真っ二つに裂け口になりました口のなかは闇で私はそこに落ちましたその後目覚めたのですが私はまるで死んでしまったかのようですだれも私に反応してくれませんだれもわたしをみることgできうないうfです家の写真にも父と母とほせしか写てない私の形跡がなくなっているたまたま見つけたノートパソコンでにゅうりょくしてますgs画面が真っ白でだれかがこれをみれるのかもわかりません、さいごになるかもからだがうsじゅh」
2つの可能性
そこでイアンさん、我々は2つの結論にたどり着くことができるのではないでしょうか。
結論1:我々は不出来な作り話に騙されている。
もしくは、
結論2:アリアナ・ゴメスは実在する。いや、していた。彼女は巨大な紫の猿の皮を被った悪魔の犠牲者になった。シュレッダー・モンキー…彼が彼女を消した。彼女の存在そのものを。あるいは、猿は彼女の次元全体を食べ、別の次元に彼女の意識だけを置き去りにした。その別の次元が、私達の次元である。なんにせよ、残されている手がかりは、ペルシャ猫愛好家の掲示板での書き込み、シスネロスのデジャブ、そしてブログのコピー。
大変お手数をおかけしますが、もう一度ブログのテキストを送っていただけますか?どうも、ハードディスクに受信トレイにも以前のメールが見当たらなくて。おそらく保存場所を間違えて見失っただけかとは思うのですが。
敬具
マイク
まとめ
Heroesのヒロを思い出しました。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございます。