「バレットアントグローブ」最強の蟻の痛みを乗り越えて一人前

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本エントリーは虫に関する話を扱っております。ご注意ください。

日本にヒアリが上陸したというニュースはかなり大々的に報道されましたよね。

ヒアリが何故危険かというと、日本本来の生態系の脅威になることはもちろんですが、刺されると毒によってかなりの激痛・腫れを引き起こすからなのです。可能性としては低いですが、毒ですのでアナフィラキシーショックを引き起こし重体になってしまうおそれもございます。

しかし世界は広いのです。「バレットアント」と呼ばれるアリはヒアリの約20倍もの痛みをもたらすとされています。

そしてそんなバレットアントを用いた恐ろしい儀式を行う民族がいるのです。その儀式とは…

バレットアントで一杯のミトンを10分間着用する

というもの。

今回はアマゾンの部族に伝わる儀式「バレットアントグローブ(トカンディア)」についてご紹介させていただきたく存じます。

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バレットアント

儀式について述べる前にまずはバレットアントについてもう少し詳しくご説明いたします。

世界最強の痛みをもたらすアリ

バレットアントの正式名は「パラポネラクラバータ(Paraponera clavata)」。和名は「サシハリアリ」。針を刺す蟻ということで和名では大したことはなさそうです。

とはいえ「バレットアント」…つまり弾丸蟻なのです。

バレットアントに刺されると弾丸を撃ち込まれたような痛みを味わうことになるとか…。

シュミット指数

虫に刺されたときの痛みを表す数値的な指標として「シュミット指数」というものがございます。

指標自体は0~4とかなり大雑把ですが、痛みという主観的な概念を数値化したものですので致し方ありません。(ちなみにこの数値は昆虫学者のジャスティン・シュミット博士が自分の体を実験台にしてそのとき感じた痛みを数値化したものなのです。)

「1」にはハナバチなどの比較的安全な虫が挙げられております。それでも痛いのですがね。

「2」にはアメリカのスズメバチなどが挙げられ、いよいよ穏やかではなくなってきます。実はミツバチもここにランクイン。

「3」にはアシナガバチなどかなりゴツイ感じでもういよいよ神経毒らしさがプンプンする感じになってきます。

「4」にはオオベッコウバチというハチがカテゴライズされております。このオオベッコウバチは別名「タランチュラ・ホーク」と呼ばれていて、タランチュラを一撃で失神させるほどの毒をもっているのです。

・・・先ほど0~4の数値で表されていると申し上げましたが、実は「バレットアント」は別格

「4.0+」

ちなみに日本に渡ってきて恐れられていたヒアリのシュミット指数が「1.2」であることを踏まえると、バレットアントがとんでもないことをおわかりいただけるかと存じます。

痛みは24時間続く

上記のようにバレットアントに刺されるとあり得ない痛みに襲われてしまうのですが、その痛みの続く時間も長いのです。

バレットアントは現地で「Hormiga Veinticuatro(24時間のアリ)」と呼ばれております。

この「24時間」というのはもちろん痛みの続く時間。

つまり弾丸を撃ち込まれたような痛みが24時間続くのです。

もう半端ではないのです。

YouTuberも刺されてみた

シュミット博士に負けず劣らず、自らの体を使って動物や昆虫の脅威を検証するYouTuberの方で「Coyote Peterson」という方がいらっしゃいます。

彼は自身のYouTubeチャンネル「Brave Wildness」にてバレットアントに刺される動画をアップロードなさっております。その再生数はなんと3日で1,000万回を突破。

ちなみに彼は2017年10月31日現在も活動を続けていらっしゃいますので、ご安心してご視聴ください。

痛みのリアクションが演技でないのがわかるくらい凄まじいです。

24時間後の患部を見せてくれておりますが、本当に腫れがひく気配はありませんね。恐ろしい。

バレットアントグローブ(トカンディラ)

さて上記のようにできるなら関わりを持ちたくないバレットアント。

しかし現地にはどうしても関わりを持たなければいけない部族が住んでいるのです。

サテラ・マウェ族

ブラジルはアマゾンに住んでいる「サテラ・マウェ族」

彼らは基本的に野生動物を狩猟することを生業としております。しかし狩猟自体は一人前と認められなければ行わせてくれません。

一人前と認められるための通過儀礼として、英語圏で「バレットアントグローブ」と呼ばれる儀式をするわけです。

日本でいう「成人式」のようなものですね。

ただ市長がアイドルの曲をアカペラで歌ってくれるようなおだやか(?)なものではないし、リーゼントなんて固めていったら地面にめり込んでしまうのは必至。

儀式前

儀式に入る10日前、儀式を行う若者(男)が食べてよいのは野生動物と蟻だけ。塩や砂糖、油類を摂取することが禁止されます。

さらに儀式前日には若者自らバレットアントを集めるために森の奥深くまで入っていかなければいけません。川を船で上って、草木を掻い潜って、元気そうな蟻を厳選して集めてくるのです。

・・・これから自分を痛めつける蟻を集めてくるとか、正気の沙汰とは思えません。しかし現地では伝統。当たり前のように行われてきたことなのです。

儀式

手袋作り

儀式に用いるのはバレットアントが編みこまれた竹織りの手袋。

…竹織りの手袋にバレットアントを入れ込んでいくときに刺されてしまわないのか?と思われた方もいらっしゃるかと存じますが、そこはさすが現地の人。バレットアントを鎮める方法も心得ているのです。

朝、族長が砕いた葉っぱとアルコールを混ぜます。その混合物から発せられる臭いをバレットアントにかがせると、獰猛なバレットアント達もおとなしくなるのです。

その隙に竹織りの手袋の隙間にバレットアントを仕込んでいくのです。

トカンディラ

手袋が完成して2時間後、儀式が始まります。先ほどまで静まっていたバレットアントも闘志むき出しです。

若者たちは手に墨を塗って、蟻に刺されないことを祈り、手袋に手を入れます。ちなみに両手です。

最初の蟻が刺すとフェロモンを分泌します。このフェロモンにより他の蟻も臨戦態勢になり、次々と刺されてしまうのです。ちなみにアゴで自らの体を固定し、同じ箇所を何度も刺してくるので相当痛いはずです。

族長達はというと、苦痛に悶える若者達の気を紛らわせようと、踊り続けます。

儀式終了

10分後、両手の手袋が外されます。

しかし先述のように24時間は痛みが続くのです。当然、若者達はこれにも耐えなければいけません。

場合によっては儀式後お亡くなりになってしまう方もいらっしゃるようです。

族長達の踊りも夜通し行われます。

これは族全体での伝統行事。族全体での戦いなのです。

実は一生に20回行われる

成人式といえば日本でたった1回ですが、バレットアントグローブは一生に20回行われます。

20回上記の儀式を行わなければ族内で一人前として認めてもらえないのです。

経験すればするほどどこか見える世界が変わってくるらしく、

蟻に何度も噛まれると、体が清められ病気をしなくなる。
魂が自由になり、空や森や川からたくさんの恵を得られるようになる。

という魂がワンランク上にいってしまったような若者までいるのです。

まとめ

私は一人前にはなれません。

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ボーン

最後までお読みくださいましてありがとうございました。

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